「終わりなき疾走」
第１６話
＜・・・試練。＞
話は飛んで、昭和６２年秋頃、友人達の協力もあって、カットのモデルにも
不都合なく練習に励んでいた頃、ある朝起きたら 右手親指の付け根の下の方、
手首との境目あたりに激痛が走りました。
「な、なんぢゃこりゃ〜〜！！」
昨日まで何ともなかったのにあまりの痛さに服を着る事も出来ません。
手首を曲げる事も親指を反らす事も出来ません。
何がなんだかわからず、それでも仕事に行かなくてはなりませんから車に
乗り込むも、まともにハンドルが斬れないのです！
幸い、店に着いてから医者へ行く事が出来、診てもらうと腱鞘炎
（けんしょうえん）だそうで、なんと職業病だそうです。
私には寝耳に水で「何でこうなったん？」とか「どうやって直すんですか？」
とかあわててお医者に聞きますと、「仕事やめれば直るよ」・・・って、
そ〜んな〜！！殺生な！
その日は湿布をもらってそいつを貼って過ごしたと記憶してますが
その時の店の人たちの反応は「そんなに痛いんか？」
「そんなん俺でもなったわ」とか、・・・複雑でしたね。
シャンプーもまともには出来ませんでしたし、ハサミの開閉も辛かった
んです。
ある一定の所まで親指を広げて行くとコクっと、引っかかりが出て
ずきーンと激痛が走ります。右手首、親指を使う事が出来なくなって
しまったのでした。
私は、もう理容人生終わったか、とその時は真剣に悩みました。
それでも仕事は待ってくれません。お客さんに、無用な気遣いを
させてはいけませんので、今までと同じように、ごく普通にやってました。（涙）
ある日、またそのお医者に治療に行った時、腱鞘炎の注射があるというので
打ってもらう事にしました。
注射といえばイッパツで効きそうなのでゼヒお願いすると、患部に直接
ブスっ・・・と、いかれました。瞬間、えっ！まぢで！？ あ"〜！
!っ痛った〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
・・・ボロ雑巾のようになって出てきた私に冬の訪れを告げる冷たい風が容赦なく
吹き付けるのでした・・・（_ _lll)
＜千載一遇の出会い＞
ある日、初めてのお客さんがやって来ました。
その方は、最近 診療所を町内に開設されたらしく、しかも整骨院だそうで、
私はそのお客さんをさせていただいている間中、色々お聞きして 一度その
診療所に行ってみる事にしました。
真新しい診療所は小奇麗で落ち着いた感じでした。そこで私は低周波治療器
をやっていただきました。初めての感覚でしかし、終わるとやや手首も
軟らかくなったような気がして暫くここへ通うことにしました。
毎日、時間があれば出来るだけ通うようにしていました。混んでいる
時などはローラー・ベッドで時間を潰してもらったりするのです。
低周波が終わったあとは仕上げに手首へのマッサージです。
これがまた気持ちいいんです！そのあとテーピングして終了です。
比較的暖かい日は手首の調子が良くて、気温の低い日なんかは良くありません
でした。
お医者の先生の言う事には「腱」が弱いので風呂に入った時に親指に抵抗をかけて
鍛えなさい。と、言われ真面目にそれも実行しました。テーピング状態で
仕事をするのは情けない感じでしたが、ここは我慢して何ヶ月か過ぎてゆきました。
年が明けて、昭和６３年の春、かなり暖かい日が多くなってきた頃、
「お〜、最近痛みがへったなー」と思っている頃、突然 回復しました！！
半年前に突然痛み出して、突然治ってしまった・・・。不思議な試練でした。
整骨院の先生もあの日、突然来店されてそれ一回きりのお客さんでした。
これもまた不思議な出逢いでした。 ・・・つづく。